ハイドアンドシーク
んぅ、と寝息とも寝言ともとれる声がきこえた。
相変わらず身体を丸めたままのそいつに目を向ける。
暑いとはいえ掛け布団もなしで眠っていては、さすがのこいつも風邪をひきかねない。
足元にぐちゃぐちゃと蹴り飛ばされている掛け布団を雑にでも掛けてやろうとした瞬間、異変に気付いた。
「……鹿嶋?」
やけに、汗を掻いていて。
寝息というよりは、呻き声に近い。
「おい鹿嶋、大丈夫か」
身体を軽く揺する。
少しして開いた目にはうっすらと涙が滲んでいた。
「この部屋、冷房壊れてません……?」
「……お前、ヒートきてんだろ、それ」
息苦しそうに呼吸する、惜しみなく熱を放つその姿をつい凝視してしまう。
それに気づかれないよう、目を逸らした。
「とりあえず、寝とけ。怠いだろうけど、なんか冷たいもん買ってくるから」
「まって、」
この場から離れなければ、と適当な理由をつけて踵を返そうとした矢先。
手首を、掴まれる。
熱い。
「ごめん……」
「……謝んなら離せよ」
「……はな、せない」
「俺が抑えられてるうちに、離せって」
言い終わるや。
掴まれた右腕が引き寄せられ、
「……わたしが、……も、限界……っ」
首筋を、熱が啄ばんだ。