ハイドアンドシーク
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──こんな夢を見た。
東雲さんがわたしのわがままに応えてくれる夢だ。
ふたり分の重みでベッドが沈む。
大きな手が、わたしの手首を掴んでいる。
熱い。
「しの、のめさん……」
けっして強い力ではなかった。
むしろ壊れ物に触れるような、弱く優しい力だった。
その気になれば、いつだってそこから抜け出すことができるくらいの。
「……っ、…ん」
かろうじて肩に引っかかっているキャミソール。
どうしよう、見えちゃう……。
胸元に気を取られていると、ふいに火照ったそこに唇が触れた。
鎖骨、首筋、と辿るように触れていく。
「やあっ、首、……ふ、ぁ、くすぐったい」
じわりと込みあがってきた熱、
薄い膜が張ったように滲む視界。
頬まで上がってきていた薄い唇が、吐息と熱が漏れるわたしの口を塞ごうとして──
「っ、キス、やだ……しないで…」
ヒートに流されて、なんて。
いくら夢とはいえ東雲さんに申し訳が立たない……。
こちらを見上げた彼と視線が交わる。
長い睫が影を落として、隠れてしまった深紅の瞳。
「……ほんと、ずるいやつ」
意識が途切れる直前に聞こえてきたのは。
甘さと、切なさを孕んだ声だった。