ハイドアンドシーク
むう、と唇を尖らせながら、わたしは床に落ちた布を拾いあげる。
じつを言うと一生かかってもできる気がしなかった。
普段でも慣れるのに時間がかかったのに、片手だけでできるわけがない。 できる、わけが、ない。
「くそう、頑張れわたし……」
そのあとも悉く失敗。
諦めるわけにもいかなくて、もう一回、と胸に布を押し当てたとき。
「っ、…んぐ、」
ぐん、と余った布を後ろから引っぱられた。
見ると、静かだからてっきり寝なおしていると思っていた東雲さんがいつの間にか背後に回っていた。
「え、まって、手伝わなくていいから…」
「無理」
やっぱり朝は強くないらしい。
返ってきた声すこし掠れていて、まだ完全に覚醒していないようだった。
っていうか無理ってなに。