辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました
 獣の咆哮かと思うほどの怒声に、部屋の壁がびりびり震える。

「うちのかわいいリティが結婚だと? たとえ相手が王子殿下だろうと許すものか!」

「あのな、マルセル。リティが大切なのは私もよくわかるよ」

 ロベールはマルセルの声にもまったく怯まず、静かに告げる。

「だが、このままでいいとは思っていないだろう。結婚の話だって遅すぎるくらいだ」

「だが、リティはまだ子どもだ」

「もう子どもじゃない。……お前も、お前の息子たちも、一生一緒にいられるわけじゃないんだ。わからないとは言わせないぞ」

 ロベールの言葉に、マルセルがぐっと詰まる。

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