一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
"ご焼香だけさせてもらえないかな"

 美礼からのメッセージに気づいたのは通夜がひと段落ついた頃だった。送られてからずいぶん時間は経っていたが、葬儀場の外から電話をしてみた。

「ごめん、遅くなって」
『ううん。こっちこそ、取り込んでるところごめんね』
「もう通夜は終わったけど、今日は僕も母さんもここに泊まるから、いつ来てくれてもいい。……祖父母は自宅に戻ってるから、安心して」

 美礼が一番気にしているだろうことを最後に口にすると、息を呑んだ気配がした。美礼の秘密を、ずいぶん前から自分は知っていた。けれどあえて触れないでいた。

『ありがとう。じゃあ……ママと二人で行くね』

 もうそれなりに遅い時間だったが、一時間ほどで二人は現れた。それまでポツポツと焼香を上げにくる人はいたが、ちょうどそれも途切れたときだった。
 焼香を上げ終わった二人に、青白い顔をした母は言った。

「まさか、こんなに早く礼志(れいじ)さんが亡くなるなんて……。ごめんなさい。美礼ちゃんを巻き込んでしまうことになって」
「何言ってるの、聡美(さとみ)さん。礼志先生には感謝の言葉しかないのに」

 親たちの意味深な会話を、複雑な心境で眺めていたのは自分だけではない。それは美礼も同じだった。
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