一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 母が阿佐永家を出たあと、代わりに家に越してきたのは叔父、悌志(ていじ)の家族だった。
 とても喜んで越してきたようには見えなかった。突然の同居に戸惑っている。そんなふうに見えた。
 祖母はそんな叔父の家族には見向きもせず、自分に執着し始めた。父の代わりとして。それがより顕著になったのは、父が亡くなってから六年後だ。

 大学卒業後法科大学院へ進み、そこも卒業し司法試験の合格発表間近というころ、祖父が亡くなった。
 峰永会はすでに代替わりし、叔父が理事長になっていた。叔父の息子は医学部に入っていたし、阿佐永の家を継ぐのは叔父家族だと、周りの誰もが思っていた。
 けれど祖母は頑なに、自分を手放そうとしなかった。

『あなたはずっと私のそばにいてくれるわよね?』

 ことあるごとに祖母は言った。
 その手を振り払えたらどんなによかったか。けれど、実質的に峰永会の実権を握る祖母は、自分が逆らおうとすると弱味を逆手に取り脅しにかかった。

『聡美さんの事業、うちが援助を打ち切ったらどうなるんでしょうね』

 楽しそうにそう言う祖母にゾッとした。自分はこんな人と血が繋がっているのかと、打ちのめされた。
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