一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
(この人さえいなければ……)

 誰にも言えない、後ろ暗い感情に囚われ自己嫌悪に陥いる。それもあと数年。弁護士になり自分の力で稼げるようになれば変わるはず、と自分を慰めた。

 司法試験に合格しても、すぐに弁護士になれるわけではない。その後約一年、司法修習を受け試験に合格したあと、法曹界に入ることになる。とはいえ、すでに最大の難関は突破していて、ここで不合格となることは少ないらしい。
 それがわかっていたのか、祖母は縁談を勧めるようになった。今までも見合い写真をよこすことはあったが、勉強が忙しいと断っていた。けれどそれもそろそろ通用しなくなっていた。

 紹介された相手に会ってみたものの、何の感情も揺り動かされなかった。
 流行りのファッションにメイク、話すことは身にもならないくだらない話。媚びるように投げて寄越す視線に吐き気がした。
 ずっと縁談を断り続けていると、祖母は『私の顔に泥を塗るな』と怒り出す。元々感情の起伏の激しい人だ。そんな姿を見るだけでうんざりした。
 仕方なく、今度は付き合うことにした。恋愛感情など湧くことはなく、冷めた態度で接しているうちに、相手から別れを切り出された。
 相手が彼女なら、そんなことはしないのに。ただ一人、恋心を募らせた人のことを思い出していた。
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