一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「えぇ。ありがたいことに、仕事はたくさんいただけています。まだまだ精進しなければなりませんので」
「そう」

 興味がなさそうに素っ気なく言うと、祖母は話題を変えた。

「ところで大智さん。今週の土曜、一緒に昼食でもと思っているの。予定しておいてちょうだい」

 有無を言わさぬ物言いもいつものこと。よほどでない限り、自分が断ることがないだろうと高を括っているのだ。

「前日の金曜日は所用がありますので、帰宅は土曜になります。昼食には間に合うようにいたしますので」

 その答えに満足したのか、祖母は微笑みを浮かべた。

「楽しみにしているわね。じゃあ私はこれで。おやすみなさい、大智さん」

 自分の用だけ済ますと祖母は踵を返す。その背中に「おやすみなさい」と声を掛け、部屋に戻るその姿を目で追った。
 ドアが小さくパタンと音と立て閉まると同時に息を吐いた。

(また……誰かに会わせようとしているのか)

 祖母の魂胆など見え見えだ。そこまでしてどうして自分を結婚させようとするのか、いまだに真意は掴めない。無意識にまた深い息が漏れた。

(金曜日、少しは気も晴れるか……)

 一番自由でいられた、高校時代の友人たちに久しぶりに会うのを、心待ちにしている自分がいた。
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