一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 運良く彼女と二人きりになった。
 昔のように話しかけられないままで終わり、後悔などしたくなかった。けれど付き合いたい、なんて自分が言う資格はない。自分が家に縛られている限り、誰も幸せになどできない。そう思っていたから。それでも、友人としてでも彼女と繋がっていたい。そんなことを願いながら歩いた。
 少しでも長い間一緒にいたくて、理由を付けて引き留めて彼女の話しを聞いた。そして、彼女に暗い影が落ちている理由を知った。

「私……。血の繋がった家族が……子どもが欲しいんです」

 星すら見えない真っ暗な空に、願うように呟く彼女の声は吸い込まれていった。
 ドクリと心臓が大きく音を立てる。また会えたのに、もう彼女にはそんな相手がいたのかと、苦いものが迫り上がってくるようだった。けれどそうではなかった。安堵しながらも、彼女を誰にも渡したくないと醜い欲望が芽生えた。
 自分は彼女を真っ当に幸せにすることなどできない。頭ではわかっている。結婚までは考えていないと彼女は言うが、それは今だけでいずれそれを望む日がくるかも知れない。
 けれど自分には、あの祖母がいる。彼女を近づけたくなどなかった。

 それでも……彼女を諦めたくなどなかった。
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