一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 瞼を開くと明るい光が目に飛び込んできた。もう朝か、と思うのと同時に、腕に自分以外の温もりを感じ安堵した。まだ規則的に聞こえる寝息と上下する肩はまだ由依が眠っていることを伝えてきた。

(温かい……)

 起こさないように、そっとその細い体を腕の中に閉じ込めると直に体温が伝わってきた。
 愛おしい。そんな言葉が浮かぶ。彼女の負った傷を癒やしてやりたい、と思うのと反面、自分も癒されたいと思った。
 
(由依といられるなら、自分は変わることができるだろうか?)

 何もかも投げ捨てて、由依といられたら……。そんな考えが湧き出すが、すぐに唯一の家族と言える人の顔が浮かんだ。
 自分が祖母の反応を押し切って由依といる道を選んだとき、母にどんな仕打ちが待ち受けているのだろうと考えゾッとした。
 母が一人なら何とかできただろう。けれど今母は、一人で抱えきれない大きなものを持っている。

 目を瞑ると、心の中で天秤が大きく揺れ動いているような気持ちになった。ほんの少しのきっかけですぐ傾いてしまう天秤は、自分の優柔不断な性格を表しているようだ。

 父はよくわかっていたのだ。
 『優しすぎる』は、必ずしも褒められたことではないことを。
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