一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「……帰りました」

 由依と別れそのまま真っ直ぐ家に帰った。出迎えたのは、申しわけなさそうな表情の叔母だった。

「お帰りなさい、大智さん。ごめんなさい……。お義母さまを止められなくて……」
「いえ。こちらこそ伝言、すみませんでした。由紀子さん」
「お義母さまは客間でそのままお待ちです」
「ありがとうございます」

 叔母とは年齢が二十も離れていない。叔母さんと呼ぶのも気が引け、ずっと名前で呼んでいた。けれどそれに、祖母は顔を顰めていた。叔母には普段、必要以上に話しかけないようにしていた。自分に執着する祖母は、嫉妬めいた態度を叔母にとるからだ。

 素っ気ない会話を交わしたあと客間に向かう。扉のノブを掴むと息を整えた。車を運転しているうちに冷静になったものの、それでも怒りは消えていない。

「ただいま……帰りました」

 部屋に入ると祖母は一人だった。お気に入りのアンティークのティーカップを持ったまま、祖母は顔を上げ眉を顰めた。

「もうお客様はお帰りになりました。都内にある大学病院教授のお嬢さんでね、貴方にどうかと思っていたんだけど……。貴方に会えなかったのを残念がっていましたよ。お詫びとして、貴方からお食事にでもお誘いなさい」
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