一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「どうして……どうして……。貴方まで……」

 青ざめた顔でやおら立ち上がると、ソーサーの上からカップが滑り落ち、テーブルにぶつかると派手な音を立てた。
 体を曲げ忌々しそうに自分に顔だけ向けた祖母の手から、今度はソーサーが離れ、また粉々に砕けた。

「許さ、ない……。また……私を……」

 般若の面が張り付いたようだった。祖母は顔を歪ませ、そして苦しそうに胸を押さえると、呻き声を上げた。

「咲子さん……?」

 あきらかに様子がおかしい。駆け寄ると、蹲るその顔は蒼白だった。何か言いたげに声を発しているが、不明瞭な呪文のように聞こえた。

「咲子さん‼︎」

 体を支え、ティーカップの破片に当たらないよう椅子に座らせる。祖母は胸を押さえたまま、荒い息を繰り返していた。

 すぐに叔母を呼び、救急車の手配をする。到着した救急隊員に、「峰永会に受け入れ要請をして欲しい」と伝えると、すぐに受け入れ許可が降りた。

「由紀子さんは救急車に同乗してください。僕は車で追いかけます」

 そう告げて自分の車に向かう。救急車はすぐに走り出し、そのあとを追うように自分も続いた。
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