一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 祖母は頑なに自分を離そうとしなかった。その日解放されたのは、面会時間がきてしかたなくだ。
 20時を回り、車の数も少なくなった駐車場で自分の車に乗り込むと溜め息を吐いた。

(こんな日が、いつまで続くのだろう……)

 まだたった一日のことなのに、永遠に続くように感じて頭がグラグラする。エンジンもかけず座席に凭れたまま、ぼんやりしていた。
 そのとき、ジャケットに入れっぱなしだったスマホがブーブーと低い音を出した。もしかして由依からだろうかと慌てて取り出し、その画面を見て思わず眉を顰める。
 それは自分が付いている先輩弁護士だった。日曜日の夜に電話がくる理由は一つしか思い当たらない。
 また深い息を吐くと、その電話に出た。

「はい。阿佐永です」
『すまん、大智。明日契約交わす予定の事案、内容変更の申し入れがあった。今事務所で作り直してるところだが、手伝ってくれないか? もう一回精査が必要だ』

 自分の仕事は9時から5時で終わるようなものではない。時々こうやって急なトラブルに見舞われることがあり、こんな電話は珍しいものではない。

(それにしても、よりにもよって何故今なんだ)

 追い打ちをかけられているような気持ちになる。だがそれに対する答えは決まっている。

「わかりました。今すぐ事務所に向かいます」

 そう言って電話を切ると、すぐさまエンジンをかけた。
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