一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 そのあとは絵本の話から別の話に移り変わり、それからそれぞれ思いついた話題を酒の肴に残りの時間を楽しんだ。
 
「うわ〜。やば、外はまだまだ暑いなぁ!」

 宴会はお開きとなり、店の外にガヤガヤと出ると、真っ先に与田が声を上げた。
 数時間前に太陽は沈んでいるが、まだ九月の初めの強い日差しに焼かれたアスファルトはそう簡単には冷めていない。立ち上る熱気が、さっきまで程よく冷やされた体を包み込んでいた。
 繁華街のこの場所の近くにある駅は二ヶ所。左手に行けばすぐ私鉄、右手には少し離れてJRがある。由依は自然と右側に寄ると立ち止まる。与田はおそらく私鉄に向かうのだろう。そちらに足を向けていた。

「だな。もう汗吹き出しそう」

 笑いながら中村も与田に近寄っている。そして由依の前を歩いていた佐倉が振り返ると尋ねた。

「瀬奈さんは駅どっち?」
「私はJRです。皆さんはあちらですか?」

 それとなく先に見えている私鉄の駅に視線を送ると佐倉は頷いた。
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