一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「そう。じゃあ……残念だけどここでお別れだね」

 改めて言われるとなんだか寂しくなる。見ず知らずの人だったのに、こんなに話しが弾んだのは久しぶりだ。

「本当にありがとうございました。今日は楽しく過ごすことができました」
 由依は心の底からそう思っていた。素直に感謝の気持ちを述べると、皆が笑顔を浮かべた。その顔を見て温かい気持ちになりながら由依も笑顔を向ける。

「では私はここで」

 連絡先は誰とも交換していない。聞かれることもなかったし、聞くこともなかった。お互い邪な気持ちがないとわかっていたからこそ、こうして楽しめたのかも知れない。もし連絡先を尋ねられる場面があったら、こんな心地よい別れはなかっただろう。

 由依が一人その場をあとにしようとしたときだった。

「あっ、待って、瀬奈さん。僕もそっちなんだ。送って行くよ」

 佐倉の横にいた大智はそう言うと由依を引き留めた。
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