一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 せっかくの申し出を無碍にもできない。戸惑いながら由依は、その手に自分の手をそっと重ねる。

「あ……、りがとう……ございます」

 大智はそんな由依に微笑みかけると、キュッと手を握った。
 由依の歩調に合わせ大智はゆっくり歩いている。盗み見るように見上げた先には、街灯に照らされている端正な横顔がある。こんな人と手を繋いで歩いていること自体、空想の出来事のように思った。
 しばらく着いて行くと先に公園が見えた。公園というより、低木で囲まれた小さな小さな休憩スペースみたいなものだ。中には街灯が一つだけあり、その左右にそれぞれ木製のベンチが置かれていた。

「よかった、空いてた。ここ、座って」

 公園に入ると大智は立ったまま由依を促す。先にそこに座ると、大智は持っていた自分のビジネスバッグだけ由依の隣に置いた。

「少し待ってて」

 それだけ言い残し大智は公園を出て行く。
 公園には緊張が解けた由依の、大きな溜め息がこだましていた。
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