一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 まだ手づかみ食べのほうが多い月齢に合わせてあるのか、おかずは掴みやすい大きさになっている。彩りも綺麗で、とにかく美味しそうだ。

「あっ! 写真! 撮っておきたいです」

 急に思いつくが、手元にスマホはない。慌てていると向かいの大智が自分のスマホを取り出した。

「僕が撮るよ」

 大智がスマホを弁当に向け、そのシャッター音が聞こえる前に、ヌッと小さな手が伸びた。

「まんま!」

 きっと時間をかけただろうキャラクターの顔は、灯希の手により見るも無残に崩される。当の本人は満面の笑みを浮かべて、ミニサイズのおにぎりを頬張っていた。

「灯希ぃ……」

 情け無い声を上げていると、大智は笑みを浮かべたまま灯希にスマホを向けてシャッターを切った。

「美味しいかい?」
「……ちい!」

 夢中でご飯を食べる灯希は、大智の呼びかけに答える。それにみんなから、自然に笑みが溢れた。

「由依さん。またいつでも作るわ。灯希くんがこれだけ喜んでくれたんですもの。作り甲斐があるわ」
「そうよ、由依ちゃん。今度は灯希くんの好きなキャラクター教えてね」

 シュンとしてしまった自分に、二人の母は口々にそう言ってくれる。心からの言葉に、温かな人柄が伝わってきた。それに、灯希を認めてくれていることが伝わってきて、目頭が熱くなってくる。

「ありがとう……ございます」

 そう返すのが精一杯の自分に、二人は微笑みを返してくれていた。

「由依、見て。この写真。凄くいい顔してるよ」

 自分たちの様子を見守っていた大智は、話が途切れるとそう言ってスマホを差し出した。画面には、幸せそうな笑顔の灯希が映し出されていた。

「本当ですね。美味しいのが顔から滲み出てます」
「由依ちゃん、私にも見せて見せて」

 ワクワクした顔の美礼にスマホを渡すと、見た途端に笑顔になった。

「本当だ、可愛いなぁ。大智、あとで私に送ってよ。待ち受けにしよ。癒されそ〜」
「わかった」
「じゃあ、美礼。私たちにもその写真送って! 私も待ち受けにするわぁ!」
 
 笑顔の絶えない賑やかな食卓が、とても幸せだと思った。

(ここに、お父さんとお母さんがいたら……よかったのにな)

 ふと両親の顔が過ぎる。思い出すのはいつも笑顔を絶やさない二人の顔。寂しくないと言えば嘘になる。けれど、今はちゃんと前を向いて進んでいける。
 ふわりと空気が温かくなったような気がした。まるで祝福してくれているみたいに。
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