一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 大智はベンチの背もたれに自分のバッグを立てかけたままそこに腰掛けた。それから、もう一つ持っていた同じボトルのフタを開けると、そのまま口に運んだ。それを見届けてから由依も同じように続く。喉を通る冷たい水が、熱を纏った体に心地よく染み渡った。
 口を離すと、一つ息を吐く。それから大智に向いた。

「すみません、ご迷惑をおかけして。お水代、お支払いします」

 由依はボトルを置き、財布を出そうとバッグに手をかける。

「迷惑だなんて思ってないし、お水代も気にしないで」
「でも……」

 自分といなければもっと早く駅に着いただろうに、歩くスピードも遅いうえに寄り道までさせてしまっている。それがなんとも言えず心苦しい。なのに大智はそれを気にする様子もなく、当たり前のことをしたと言わんばかりに平然としている。
 由依が思い悩んでいると、先に大智が切り出した。

「じゃあ……。代わりに瀬奈さんの話を聞かせてくれないかな? そうだな。仕事のこととか」
「仕事……ですか?」
「そう。どんなことをしてるのか、全く知らない世界だし興味あるな」

 大智は由依の顔を覗き込むと、柔和な笑顔を見せていた。
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