一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「加害者は、一時停止を無視して猛スピードで突っ込んできたみたいです。向こうは大きな外車。こちらは軽ワゴンで……。その後のことは今でもあまり記憶にありません。知人が弁護士さんを紹介してくれて、ずいぶん助けてもらいました。今でも感謝してるんです」
「瀬奈さんが今でもそう思ってくれているなら、その弁護士もきっと誇りに思っているよ」
「そうだと……いいんですけど」

 由依はその、親身になってくれた女性弁護士の顔を思い出しながら答えた。そして空を見上げ、また話し出した。

「私に兄弟はいません。そして、両親のどちらにも親がいなかったんです。二人とも施設の出で、そこで知り合って結婚したので。弁護士さんが親類を探してくれたんですけど、結局見つかりませんでした」

 由依の視線の先には、ビルに邪魔されあちこち切り取られた漆黒の夜空が浮かんでいた。公園の植え込みからは、秋の気配を告げるように、時々虫の音が響いていた。それに耳を傾けながら、由依は独りごちるように言葉を吐き出した。願いが空に届く気がしたから。

「私……。血の繋がった家族が……子どもが欲しいんです」
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