一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「…………由依」

 自分を呼ぶ切なげな声と吐息が耳を撫でる。そこから広がった甘い感覚が、ぴったりと密着した場所と共鳴して疼いていた。

『約束はできません』

 心の中で、由依はそう返事をした。
 
 自分の願いを叶えるために、大智は協力しようとしてくれている。だから消えないで、なんて言ったのかも知れない。本当のところ、大智が何を思っているかなんてわからないけれど。

(でも……。今だけは……)

 愛されているわけなんてない。けれど自分を愛してくれる人が確かにいる。それが勘違いだろうと、今だけはそう思いたかった。
 由依はおずおずと両手を大智の首に回す。それを合図に、緩やかだった動きは少しずつスピードを上げる。

 立場も時間も、自分たちを取り巻く何もかもを忘れて、ただ求め合い、溶け合って、我を忘れた。
 大きな波が襲い、それに飲み込まれる。夢中でしがみつきながら、由依は大智から放たれた欲を受け止めていた。
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