一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 困ったような表情を浮かべた大智は、しばらく考えてから切り出した。

「じゃあ……。ここは僕が出すから、昼食は由依にお願いしてもいい?」
「はい! もちろんです」

 付き合っているわけでもないのに、いや、例え付き合っていたとしても、ずっと奢られ続けるのは気が引ける。大智が考えてくれたちょうど良い落とし所を、由依は笑顔で受け取った。

 チケットを購入し戻ってくると、大智は「行こうか」とさりげなく由依の手を引く。思わず見上げた先にある大智の顔は、由依を見て微笑んでいた。

「だめ? 手を繋ぐのは」

 しっかりと自分の手を包み込む大きな手に長い指。その指は離れたくないと由依の指の間に絡んだ。昨夜それ以上のことをしたのに、恥ずかしさから頰は熱を帯び紅潮した。

「だい……じょう、ぶ……です」

 嬉しそうに口角を上げる大智を直視できず、顔を逸らしてそう答える。大智はそんな由依の手を一層強く握ると、中に向かって歩き出した。
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