一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 まるでテーマパークのような館内をゆっくり進む。そして二人が足を止めたのは、同じ水槽の前だった。
 カラフルな照明で照らされた円柱の水槽の中にいるのは、水中をゆらゆらと漂うクラゲたち。そのゆったりとした動きに、時間の流れまで遅くなったように感じた。

「なんだか……和みますね」
「そうだね。勧めてくれた人もここが気に入っていると言っていたんだ」

 同じ水槽を見上げ大智は話し出す。白く透明なクラゲたちが、中でふわふわと踊っているのに合わせたかのようにゆっくりと。

「僕が担当しているのは、企業の法務関係が多いんだ。この近くにある企業もその一つでね。その人は年間パスポートを持っているらしくて、ストレスが溜まると、ほんの数分でもいいから見に来ると言っていた。こうしていると納得するよ。無心になれるっていう意味が」

 ほんのりと水槽を照らすライトに映し出された横顔は、とても穏やかだった。その形の良い輪郭を眺めながら、由依はその話に聞き入っていた。
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