一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 目の前の水槽に見入る大智と同じように、しばしクラゲたちを眺める。不思議なリズムを刻み、ふわりふわりと揺らめくその姿に、意識が吸い込まれていきそうだ。
 このクラゲたちを、狭い水槽の中に閉じ込められ可哀想だと思う人もいるかもしれない。けれど天敵に襲われることもなく、自由気ままに水に身を預けていられるのは幸せなのかも知れない。大海原に想いを馳せることもなく、現状を受け入れ、それでもクラゲたちは精一杯生きているのだ。
 由依はそんなことを考えながら、ぼんやりと水槽を眺めていた。

「そうだ……」

 突然大智が思い出したように呟くと由依に顔を向けた。

「もうすぐイルカショーがあるらしい。見に行く?」

 それを聞いた由依の表情はパァッと明るくなる。

「え! 行きたいです!」

 由依がそう言うのを予想していたのか、大智は笑顔を見せると「こっちだ」と次の順路に足を向けた。

 エスカレーターで二階に上がると、すぐにあったのは、客席が円錐型にぐるりと囲んでいる大きなプールだった。ショーはあと十五分ほどで始まるらしく、客席の中段より上は結構埋まっていた。
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