一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
「そろそろ行こうか。まだまだ見るところはたくさんあるようだし」

 先に立ち上がり、座ったままの由依に手を差し出す。由依はゆっくりと顔を上げ思いを巡らせていた。
 きっと大智には、人に触れられたくない何かがあるのだろう。それはきっと身近な人……家族、なのかも知れない。

(血が繋がっていても、諍いは起こる……)

 昨日の夜、大智が口にした言葉が思い浮かぶ。そのときはてっきり、職業柄そういう人を見てきたからなのだと思っていた。けれどさっきからポツポツと語る、自分自身についての事柄は、どこか孤独を感じるようなものだった。

(だから……なのかな……)

 今まで向けられてきた同情とは何か違う。大抵の人は、自分自身は不幸ではなくて、どこか優位に立ちながら由依を憐れんでいた。でも大智は、どこかに同じ寂しさを抱えている。だからこそ、自分にここまでのことをしてくれているのだ。
 由依はようやく、ずっと感じていた違和感の答えを見つけた気がしていた。

「……ですね。まだまだ楽しみましょう」

 ほんの束の間でいい。その寂しさを埋められるなら。この先の人生の、なんの慰めにもならないけれど。
 由依はそう思いながら、笑顔を作るとその手を取った。
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