一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 それだけで、大智は良い父親になりそうだと想像してしまう。けれど由依には一つ引っかかることがあった。

(……結婚はできないって、言ったよね……?)

 しないでも、したくないでもなく、確かに昨日大智は、できないと言ったはずだ。その意味はわからないけれど、今の姿を見て、それを大智自身が望んでいるわけではないような気がした。

「さあ。お母さんを探そうか。見つけたらおじちゃんに教えて」
「うん!」

 すっかり心を開いた陽向は大智に威勢の良い返事をした。大智は振り返ると由依に尋ねた。

「とりあえず、インフォメーションに聞いたほうがいいかな?」
「そうですね。探し回っている可能性もありますけど、見つからなければきっと向かうでしょうし」
「じゃあ順路を進んでみよう」

 三人でゆっくりと水槽のトンネルを進む。
 陽向は周りがよく見えるようになったことが嬉しいのか、母を探すよりすっかり魚たちに夢中になっている。大智はそんな陽向に話しかけながら歩いていた。

(よかった。楽しそう)

 二人を横目に見ながら、代わりに由依が当たりに目を凝らす。人を探している、赤ちゃん連れの女性がいないかを。
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