難攻不落の女
「そんなつもりは。でも、そうですよね。俺が何者かもわからないのにすみませんでした」

「いや、私が知ろうとしなかったんだよ」
 宇美は俯いてため息を吐いた。

「私は自分に自信がないのよ。こうやって好意を寄せられることもなかったし、よくわからないの。でも、検討します」
 書類を持って腰を浮かせると、笹目がソファを弾き飛ばしそうな勢いで立ち上がった。

「時間を越える方法を絶対に見つけて、必然性を生み出しますから」
 両手の拳を握りしめて喜ぶ姿を、微笑ましく眺めている場合ではなかった。これは他人事ではないのだ。

 社員たちが自分に自信を持てるように。ずっと誰かのために奔走し続けていたのに、いざその相手が自分となると、何から始めたら良いのかわからないのが可笑しかった。

 頬が緩みそうになって、宇美は唇を噛みしめた。
 何気ない日々の中に、幸せを感じられる瞬間を見つけ、繋ぎながら生きていくことができたのなら、残りの人生もそう悪くはないのかもしれない。















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