新人洗濯係がのぞいた秘め事~王太子の秘密を暴いた先にあるのは溺愛か死か~
* * *
あれから数日が経過した。
何も進展はなかった。王宮の手伝いには呼ばれないし、ユリックとも会っていない。
「ねえねえ聞いた? 王太子妃様の話」
洗濯の最中に同僚に言われて、リエーヌはどきっとした。
「知らない。なんのこと?」
「リエーヌったら本当に王宮のことにうといわよね」
えへへ、と笑ってごまかす。内心は冷や汗が流れていた。
「王太子妃様、お倒れになったんだって」
「ええ!?」
思わず大きな声が出た。
「そこ、無駄なおしゃべりしないで」
アデリーンにじろりと見られ、慌てて手を動かす。
「もう。怒られちゃったじゃない」
小声で文句を言われる。
「ごめん。それで、お倒れになったって、どうして?」
「毎晩、王太子様が眠らせてくれないんだって!」
うふふ、と同僚が笑う。リエーヌは青ざめた。
「毎晩、それはそれはもう、激しいんですって」
お許しください、というか細い声。殴られるような音。
リエーヌは男女のことに疎い。そういう行為が実際にどんなふうに行われるのかも知らない。だが、あの様子はとうてい、夜の営みによるものとは思えなかった。