新人洗濯係がのぞいた秘め事~王太子の秘密を暴いた先にあるのは溺愛か死か~
「私は妊娠して倒れたって聞いたわよ」
 別の同僚が口をはさむ。

「最近、ろくに食事もとってないって」
「あら、つわりかしら。でも、結婚してから……計算合わなくない?」
「もう、そんな野暮なこと言うわけ? もちろん前から愛し合ってたに決まってるじゃない」
「でもご懐妊なら公表するんじゃない?」
「時期ってもんがあるのよ」
 わかったように言う同僚に、リエーヌは何も言えなかった。

 * * *

 その夜、リエーヌは眠れずにいた。
 彼女がいるのは大部屋で、周りはもう全員が眠りについていた。

 昼間に聞いた同僚の話は、以前なら一緒になって盛り上がれたはずだった。
 だが今は、いろんなことを考えてしまう。

 こつん、と窓になにかが当たる音がした。
 気になって窓を開けると、木の陰に馬と共に立つ人影が見えた。
 月明かりに照らされたその人を見て、リエーヌは慌てて外に出た。

「ユリック様、どうしてこんなところに」
「君に会いたくなって」
 ユリックは羽織っていた外套を脱ぎ、リエーヌに着せた。
 リエーヌは顔を赤くした。慌てて出て来たので夜着のままだった。

< 18 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop