【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!
 バレリー伯爵と呼ばれた紳士は「いやいや、そんな」と謙遜しつつも、誇らしげに優しく娘の頭を撫でている。

(いいなぁ……)
 
 絵に描いたような裕福で幸せそうな貴族の親子。
 それに比べて、自分はなんてみすぼらしいんだろう……。

 ひどく惨めな気持ちになった少女は、荷物を抱えてその場から逃げ出す。

 それからというもの、少女はあの日出会ったご令嬢を、繰り返し思い出すようになった。

 キラキラした金髪、透き通った大きな青い瞳。人目を引く整った顔立ち。
 富、美貌、地位、親からの愛情……すべてを持ち合わせているバレリー伯爵家のお嬢さん。

(あたしも、あの子みたいになりたいなぁ)

 心の底から(うらや)み『変われ、変われ』とまじないを唱えても、鏡の中に映るのは平凡な己の顔のみ。
 
 どれだけ神に祈っても、強く念じても、自分の顔と境遇は変えられない。変わらない。

 (うらや)みが(うら)みに変化するのに、それほど時間はかからなかった。

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