その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 以前頭の中で叫んだみたいに、一言忠告くれれば何か対応出来たかもしれないのに……。
 言い募ろうとする紙安に取り合わず、ステイシアは首を横に振る。

「うるっさいわね。あたしだって明確な確信は無かったし、繰り返しに関してはどうせお前も半信半疑だったでしょ? ちゃんと自分で体験させて、納得させる必要があった。あの方法じゃダメってことでしょう」

 ロゼを覚醒させ、リューグと対抗させる通常の物語の道筋は閉ざされているのだと、そう彼女は言う。

「じゃあ、どうすれば……」 
「それをあたしとお前で考えるんでしょ。でもこれは重要な手掛かりでもある。お前と入れ替わったおかげで異なった結末に至る可能性もあったはずなのに、そうはならなかった……こう何度も作為的な感じの失敗が続くってことは、運命を改変するのに何か決定的なものが欠けているのかもね――」

 今回のような場当たり的な修正を行うのではなく、もっと根本的な部分に焦点を当てる必要があるのかもしれない――。
 そんなことを考えた紙安とステイシアの間にしばし沈黙が流れる。
 しかし前回を考えると、彼女と話せる時間は長くはない。
 紙安はとりあえず、ステイシアと『輝石喚ぶ大地』についての知識を共有すべきだと思った。
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