茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
「あんな凶悪な見た目の魚が旨いって思えないんだが……」
「え? 見た目は確かに怖いかもだけど、目がまんまるで可愛いよ? それに、脂が乗ってて美味しいんですって」
陽翔は無理やりウツボと目を合わせる。すると彼の視線を受け取ったのかいないのか、もぞもぞと壺の中から這い出すと、そのまま体を大きくくねらせて、二人の前で向きを変えた。
「すごい……! ウツボってそうやって泳ぐのね……!」
魚というよりは蛇に近い動きをしているが、潜んでいた時よりはその獰猛な見た目は緩和されている気がする。百子の指摘した通り、つぶらな目をしており、それがよく見えるからかもしれないが。
「それにしても……見慣れた魚が多いな」
時折カワハギやクロダイ、スズキなどの、スーパーの鮮魚コーナーに並ぶような魚達も、鱗をきらめかせながら二人の目の前で悠々と泳いでおり、それらを目で追っていた百子の胃が小さく鳴った。
「陽翔、今日の晩御飯はお魚がいい!」
陽翔は笑いながら、全く食い意地が減っていない百子の提案に頷いて、彼女の手を引いて次のエリアに移動する。アオリイカやコウイカのいる水槽や、チンアナゴが何匹か顔を出している水槽、イソギンチャクやクマノミなどの、熱帯に住む生き物の水槽、タカアシガニなどの深海の生き物のいる水槽といった、比較的小さな水槽が並んでおり、陽翔はまるで個室のようだと感じた。先程までの、様々な種類の魚のいる大きな水槽は、さながら修学旅行の大部屋だろうか。
(同じイカでも、よく泳ぐのもいるし、底でじっとしてるのもいるのね)
百子はすいすいと泳ぐアオリイカと、砂の上でじっとしているコウイカをかわりばんこに見ながら感心したように唸る。陽翔は陽翔で、色とりどりのイソギンチャクやサンゴ、小さな熱帯魚やチンアナゴを見て目を輝かせており、お互いが好きな生き物の豆知識や、意外な生態を、エリアを移動しながら代わる代わる語り合った。メインの最も大きな水槽に、一際目立つ二頭のジンベイザメの姿を認めた二人は、会話を忘れて、水玉模様の巨体が楽しげに輪を描いている様子をしばし観察する。
「サメの癖にこんなにでかくて、魚を食べないってすげえな……」
アクリル越しにすいすいと、他のサメに視界を妨害されながらも、陽翔はそう呟く。百子はそれに肯定して陽翔の手を握り返した。そしてちらりと彼の方を盗み見る。淡い青に染まった彼の横顔は、どういう訳かいつも以上に精悍に見える。冷静沈着な彼の性格も相まって、この場に酷く似つかわしくもあった。穴が開くほど彼の横顔を凝視していたのがバレたのか、陽翔はニヤリとして彼女の手を引いた。そして水槽の端に設置されている二人がけの椅子に、百子の腰を引き寄せて座り、その頬に陽翔の唇が触れる。
「え? 見た目は確かに怖いかもだけど、目がまんまるで可愛いよ? それに、脂が乗ってて美味しいんですって」
陽翔は無理やりウツボと目を合わせる。すると彼の視線を受け取ったのかいないのか、もぞもぞと壺の中から這い出すと、そのまま体を大きくくねらせて、二人の前で向きを変えた。
「すごい……! ウツボってそうやって泳ぐのね……!」
魚というよりは蛇に近い動きをしているが、潜んでいた時よりはその獰猛な見た目は緩和されている気がする。百子の指摘した通り、つぶらな目をしており、それがよく見えるからかもしれないが。
「それにしても……見慣れた魚が多いな」
時折カワハギやクロダイ、スズキなどの、スーパーの鮮魚コーナーに並ぶような魚達も、鱗をきらめかせながら二人の目の前で悠々と泳いでおり、それらを目で追っていた百子の胃が小さく鳴った。
「陽翔、今日の晩御飯はお魚がいい!」
陽翔は笑いながら、全く食い意地が減っていない百子の提案に頷いて、彼女の手を引いて次のエリアに移動する。アオリイカやコウイカのいる水槽や、チンアナゴが何匹か顔を出している水槽、イソギンチャクやクマノミなどの、熱帯に住む生き物の水槽、タカアシガニなどの深海の生き物のいる水槽といった、比較的小さな水槽が並んでおり、陽翔はまるで個室のようだと感じた。先程までの、様々な種類の魚のいる大きな水槽は、さながら修学旅行の大部屋だろうか。
(同じイカでも、よく泳ぐのもいるし、底でじっとしてるのもいるのね)
百子はすいすいと泳ぐアオリイカと、砂の上でじっとしているコウイカをかわりばんこに見ながら感心したように唸る。陽翔は陽翔で、色とりどりのイソギンチャクやサンゴ、小さな熱帯魚やチンアナゴを見て目を輝かせており、お互いが好きな生き物の豆知識や、意外な生態を、エリアを移動しながら代わる代わる語り合った。メインの最も大きな水槽に、一際目立つ二頭のジンベイザメの姿を認めた二人は、会話を忘れて、水玉模様の巨体が楽しげに輪を描いている様子をしばし観察する。
「サメの癖にこんなにでかくて、魚を食べないってすげえな……」
アクリル越しにすいすいと、他のサメに視界を妨害されながらも、陽翔はそう呟く。百子はそれに肯定して陽翔の手を握り返した。そしてちらりと彼の方を盗み見る。淡い青に染まった彼の横顔は、どういう訳かいつも以上に精悍に見える。冷静沈着な彼の性格も相まって、この場に酷く似つかわしくもあった。穴が開くほど彼の横顔を凝視していたのがバレたのか、陽翔はニヤリとして彼女の手を引いた。そして水槽の端に設置されている二人がけの椅子に、百子の腰を引き寄せて座り、その頬に陽翔の唇が触れる。