茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
「足元気をつけろよ」
陽翔は再び百子の手を固く繋ぐ。先程とは打って変わって、墨をこぼしたような通路が続いていたからだ。所々足元に落ちている明かりはあるものの、ゆっくり進むように案内書きも注意喚起をしているので、用心するに越したことはない。天井はまるで星空のように、小さな明かりが埋められていて、百子が上ばかり見て歩いているからというのも理由なのだが。
「陽翔こそ。大丈夫とは思うけど……わあ……!」
目当ての水槽を見つけた百子は、思わずため息を漏らした。陽翔も無言で泳ぐそれらを見つめる。
丸い大きな水槽に、丸く足の短めなクラゲがふわふわと舞っているその光景は、部屋の暗さも相まって、宇宙を遊泳しているように見える。もしくはクラゲそのものが銀河のようだ。
他にも足の長いクラゲが、まるでドレスを纏って優雅に身を翻している様子や、小指の長さよりも小さなクラゲが傘をせわしなく動かして泳ぐ様子、下から7色の光が徐々に変化しながら、真っ白なクラゲを彩っている様子の水槽がそれぞれ存在し、見る者のため息を引き出している。二人もその例に漏れず、水の中の彼らの舞を、一挙手一投足を逃すまいと目に焼き付けた。
とはいえ、水槽の表面に傘を貼り付けているクラゲもちらほら存在し、百子はそれを見て口元を緩める。
(まるで疲れて休憩してるみたい)
最後に透明な傘と光る触手を持つクラゲの演舞を眺めていた百子は、どういう訳か胸が締め付けられる心地がして、陽翔の頬に口付けした。驚いた陽翔がぽかんと口を開けて彼女を見たところで、百子は満足して陽翔の手を引いてクラゲのいるエリアを出る。暗く静謐な空間から、明るく喧騒の支配する空間に出たために、二人は一瞬だけ眩しそうに目を細めたが、そこにあった時計を見てぎょっとした。水族館に入ったのは午後1時なのに、すでに夕方の時刻を短針が突きつけていたからだ。
「やべえな……3時間も中にいたのか……」
陽翔は半ば呆然として呟く。青い空間にいれば、どうしてもゆっくり時間が過ぎてしまうものなのだろうか。それとも百子が隣にいたからなのだろうか。お土産売り場でぬいぐるみやらキーホルダーやらお菓子やらを物色している百子を、口元をだらしなくしながら眺めていた陽翔だったが、橙色が顔を覗かせている空を目撃して、百子がお土産を携えてくるのを待った。
「百子、何買ったんだ?」
百子はにこにことして、秘密とだけ告げる。陽翔は一瞬眉根を寄せたが、次の彼女の言葉で眉間の皺が伸びた。
「ねえ陽翔、近くにある観覧車乗りたい! 日も傾いてるし、昨日は雨だったからきっときれいに見えると思うの!」
元々陽翔も百子と二人きりになりたいと考えていたので、彼女が何も言わなければ彼もその提案をしようと思っていたため、彼は二つ返事をして百子に手を引かれ、橙色に背中を押されながら水族館の隣にある観覧車乗り場へと向かった。
陽翔は再び百子の手を固く繋ぐ。先程とは打って変わって、墨をこぼしたような通路が続いていたからだ。所々足元に落ちている明かりはあるものの、ゆっくり進むように案内書きも注意喚起をしているので、用心するに越したことはない。天井はまるで星空のように、小さな明かりが埋められていて、百子が上ばかり見て歩いているからというのも理由なのだが。
「陽翔こそ。大丈夫とは思うけど……わあ……!」
目当ての水槽を見つけた百子は、思わずため息を漏らした。陽翔も無言で泳ぐそれらを見つめる。
丸い大きな水槽に、丸く足の短めなクラゲがふわふわと舞っているその光景は、部屋の暗さも相まって、宇宙を遊泳しているように見える。もしくはクラゲそのものが銀河のようだ。
他にも足の長いクラゲが、まるでドレスを纏って優雅に身を翻している様子や、小指の長さよりも小さなクラゲが傘をせわしなく動かして泳ぐ様子、下から7色の光が徐々に変化しながら、真っ白なクラゲを彩っている様子の水槽がそれぞれ存在し、見る者のため息を引き出している。二人もその例に漏れず、水の中の彼らの舞を、一挙手一投足を逃すまいと目に焼き付けた。
とはいえ、水槽の表面に傘を貼り付けているクラゲもちらほら存在し、百子はそれを見て口元を緩める。
(まるで疲れて休憩してるみたい)
最後に透明な傘と光る触手を持つクラゲの演舞を眺めていた百子は、どういう訳か胸が締め付けられる心地がして、陽翔の頬に口付けした。驚いた陽翔がぽかんと口を開けて彼女を見たところで、百子は満足して陽翔の手を引いてクラゲのいるエリアを出る。暗く静謐な空間から、明るく喧騒の支配する空間に出たために、二人は一瞬だけ眩しそうに目を細めたが、そこにあった時計を見てぎょっとした。水族館に入ったのは午後1時なのに、すでに夕方の時刻を短針が突きつけていたからだ。
「やべえな……3時間も中にいたのか……」
陽翔は半ば呆然として呟く。青い空間にいれば、どうしてもゆっくり時間が過ぎてしまうものなのだろうか。それとも百子が隣にいたからなのだろうか。お土産売り場でぬいぐるみやらキーホルダーやらお菓子やらを物色している百子を、口元をだらしなくしながら眺めていた陽翔だったが、橙色が顔を覗かせている空を目撃して、百子がお土産を携えてくるのを待った。
「百子、何買ったんだ?」
百子はにこにことして、秘密とだけ告げる。陽翔は一瞬眉根を寄せたが、次の彼女の言葉で眉間の皺が伸びた。
「ねえ陽翔、近くにある観覧車乗りたい! 日も傾いてるし、昨日は雨だったからきっときれいに見えると思うの!」
元々陽翔も百子と二人きりになりたいと考えていたので、彼女が何も言わなければ彼もその提案をしようと思っていたため、彼は二つ返事をして百子に手を引かれ、橙色に背中を押されながら水族館の隣にある観覧車乗り場へと向かった。