茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
百子は、結果を聞いてうきうきとして今にも踊り出しそうになっている陽翔に付き添われて家に辿り着いても、陽翔と晩御飯を食べていても、実家に妊娠の報告をしても、久々に一人でお風呂に入っていても、上の空のままだった。陽翔が赤ちゃんの名付けをパソコンとにらめっこしながらリストアップしていたり、マタニティー用品やベビー用品を見つけて片っ端から買い物かごに入れたりしていたので、ようやく彼女も自分に新しい命が宿っていると、徐々に飲み込めるようになり、じわじわと胸が熱くなる。

「陽翔、まだ早いよ。産まれてもないのに」

陽翔が新聞サイズのリストをこしらえるものだから、百子は思わず微苦笑する。濡れた髪を拭きながら陽翔の手元を覗くと、びっしりと文字で埋められており、彼の熱心さを垣間見た気がした。

「そうか? 俺達の赤ちゃんが産まれてくるんだぞ? 準備は早いに越したこと無いと思うが」

すっかり上機嫌な陽翔は、リストをテーブルに置き、百子を優しく自分に引き寄せ、彼女の下腹部を撫でる。その目つきがいつになく柔らかく、百子は陽翔の頬に触れて口付けをした。

「……びっくりした。まさか陽翔の赤ちゃんを宿してるなんて、思ってもみなかったから。陽翔も、両親も、陽翔のご両親も、喜んでくれて嬉しい」

子供を授かった歓喜が後から後から押し寄せ、百子は目を閉じて陽翔の肩にもたれかかる。そんな彼女の頭を撫でながら、弾むように陽翔か告げた。

「嬉しいに決まってんだろ。家族が増えるんだぞ? きっと百子に似た可愛い女の子が産まれる気がする」

子供の性別を断定した陽翔に、百子はくすくすと笑って首を横に振る。

「まだ性別は分かんないよ。あと2ヶ月しないとって先生も言ってたじゃない」

「いや、絶対女の子だ」

きりっとして断言する陽翔に、ついに百子は頭を反らせ、口を開けて笑い出す。陽翔がここまで喜ぶとは百子も想定しておらず、彼の行動や言葉が全て可愛く見えてしまう。このまま幸せに浸っていたい百子だったが、足元から這い上がる不安に心臓を撫でられ、目を伏せてしまう。

「どうした? どこか悪いのか?! それとも心配なことがあるのか?!」

彼女が唐突に下を向いたため、陽翔はあたふたとして彼女の頬に手を添える。曇った表情の百子が目を合わせてきたため、どぎまぎしながら彼女の言葉を待った。

「……そうね。心配事ならたくさんあるよ。今後の仕事のこととか、産休のこととか、通院とか役所の手続きとか……あとはつわりとかを含めて、体調の変化について行けるのかなって……ちゃんと産めるかとか、私がちゃんと育てられるかとか、そこも心配」
< 232 / 242 >

この作品をシェア

pagetop