神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「…そうですか…。…兄上が…」

アーリヤット皇国の皇王…フユリ様の兄が、懐刀とも呼ぶべき『HOME』の刺客を差し向けてきたと聞き。

フユリ様は、何とも言えないという顔をして目を伏せていた。

…心中お察し致します。

兄の名前を聞くだけでも、頭が痛くなるだろうに。

「…愚兄がご迷惑をおかけしました。シルナ学院長」

「え、いや…とんでもないです」

それどころか、シルナに謝罪するとは。

こっちの方が申し訳なくなってくる。

「近頃は音沙汰もなくなったと思っていましたが…。やはり、兄は私のことを忘れてはいないようですね」

…そりゃあ、な。

向こうも並々ならぬ思いで、ルーデュニア聖王国から出ていったんだろうし。

「ですが、気になるのは…何故ナツキ様は、今行動を起こしたのでしょう?これまでは比較的…その、均衡を守っていたように思えますが」

シルナは必死に言葉を選びながら、フユリ様にそう尋ねた。

これまで大人しかったのに、何でいきなり動き出したのか。

何かきっかけでもあったのか?

「…思い当たる節はあります」

言葉を濁すかと思われたが、フユリ様は包み隠さず話してくれるようだ。

「と、言いますと…?」

「つい2ヶ月ほど前の話です…。兄上と…アーリヤット皇国貴族が主体となって、新たな国際条約の締結を、非公式に諸外国に呼びかけたんです」

えっ。

これには、俺もシルナも互いに顔を見合わせた。
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