神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
しかも恐ろしいことに、ナツキ様が提案したのは国内ではなく、国家間における国際条約である。

それが意味するのは…。

「そして、国家間の魔導師の貸し借りも、国王の裁量によって決められるという条約で…」

「魔導師の貸し借り…ですか?」

「国内にいる優秀な魔導師を、有料で他国に貸したり借りたりする制度です」

…おいおい、マジかよ。

魔導師のライセンス化…なんて、まだ生易しい。

魔導師の貸し借りって、しかも有料って。

つまりそれって…。

「…魔導師を、お金で売るってことですか。お金儲けの道具にすると…」

「そういうことです。魔導師を便利な道具のように、国家間で互いに貸し借りし、それによって利益を得る…」

ナツキ様は、魔導師を完全にモノとして見ているようだな。

輸出される家畜のようなものだ。

つくづく、俺達の国王がナツキ様じゃなくて良かった。

我が国のフユリ様は違う。

「私は厳重に抗議しました。そのような非人道的な条約を締結することは出来ない。人権侵害も甚だしいと」

その通りだ。

よく言ってくれた。

「ルーデュニア聖王国の代表である私が強く反対したものですから、それによって諸外国の代表の方々も、次々に不参加を申し出て…」

「…結局、その条約に批准する国は現れたんですか?」

「いいえ。それどころか、私の反対がきっかけで…条約そのものが破棄されました」

それは何よりだ。

非人道的な条約のせいで、犠牲になる魔導師を出さずに済んだ。

俺達の知らないところで、そんな恐ろしい条約が結ばれようとしていたとは…。

知らない方が幸せだったな。
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