神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「いろりちゃんが。ぐすっ…いろりちゃんが、し、死んじゃうかもしれないなんて…」

みるみるうちに、再び涙が溢れている。

あぁ、もう見ていられない。

「だ、大丈夫だよ!探そう。学院の中を隈無く探そう!そうしたら見つかる…、」

と、シルナが言いかけたそのとき。

「戻ったよ」

いつの間にか、窓枠に令月とすぐりが足をかけていた。

全く音を立てずに現れたものだから、危うく腰を抜かすところだった。

黒装束の「仕事着」に身を包んだ元暗殺者組は、学院長の床にひょいっ、と飛び降りた。

「お前ら…何やって」

「猫を探してきた。学院の敷地内、隈無く」

どうやら、既に捜索隊は作られていたようだな。

仕事着を着ているのは、それが理由か。

「俺も糸魔法を校内中に張り巡らせてさー、猫の声や足音が聞こえないか試してみたんだけど」

と、すぐり。

「…駄目だったのか?」

「うん。残念ながら」

…そうか。

それは…ちょっと、絶望的な状況かもな。

令月とすぐりが校内を隈無く探して、それで見つけられなかったなんて。

他に誰が探せば、いろりを見つけることが出来るって言うんだ?

「そんな…じゃあいろりちゃんは、学院の外に出て行っちゃったの…?」

「…そうかもしれないな」

俺とシルナがそう言ったのを聞き、女子生徒は二人共、わっと泣き出した。

あぁ、違う。泣かせるつもりじゃなかったんだ。

「な、泣かないで。大丈夫、大丈夫だから…あっ!そうだ」

と、シルナは何かを閃いたように、手をぽんと打った。

あ?

「エリュティア君だ。エリュティア君に探してもらおう!」

その手があったか。

そう。俺達には、人探し、物探しの達人がいる。

恐らく、国内で最も優れていると言っても過言ではない、探索魔法のプロである。

エリュティアを学院に呼び、いろりの「痕跡」を辿ってもらう。

そうすれば、いろりが何処にいるのか突き止められるはずだ。

学院のOBとはいえ、仮にも聖魔騎士団魔導部隊の大隊長を、飼い猫探しに利用するなんて。

畏れ多くてバチが当たりそうだが、しかし、これ以上生徒達に心配をかけたくはない。

エリュティアには、俺とシルナで頭を下げて頼もう。

急な任務でも入ってない限りは、付き合ってくれる…はずだ。
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