三日月が浮かぶ部屋で猫は ~新米ペットシッターは再会した初恋の彼の生涯専属を求められる~
「すごいお嬢様の猫になりそう」
「親ばかっていうか猫バカになる自信しかない」
 尚仁がドヤ顔で言うから、思わず笑ってしまった。

「でもなんでスフィンクスだったの?」
「君が猫好きだったから」
 言われて、どきっとした。

「なんてね。君の影響を受けたのは確かだよ。子供のころ君の家に遊びに行ったとき、猫、かわいかったから」
「そういう意味ね」
「どういう意味だと思った?」
「尚くんってこんな意地悪だったっけ?」
 沙耶は顔を赤くして聞く。
「さあ?」
 彼はくすくすと笑った。

「で、どんな猫がいいかな、と探していたらスフィンクスを知って。初めは変な猫って思ったけど、服に毛がつかなくていいな、って動画を見てたらどんどんかわいく見えてきて」
「私も最初は変だなって思ったわ」
「でしょ? そんなときに猫の里親募集のサイトを見たら、いたんだよ。即決だった」
「運命の出会いをしちゃったのね」
「そういうところかな」
 尚仁は苦笑した。

「飼ってみて、普通の猫より大変かもって思ったけどもう遅かった。かわいくて仕方ない」
「なんで? 体温調節ができないから?」
「毛がないぶん皮脂が出るんだって。けっこう臭いんだよ。毎日体を拭いてあげないといけなくて、週に一度はお風呂だよ。この子はおとなしいからいいけど、暴れるタイプだと大変だろうな」
「そんなことあるんだね」

「ペットショップの店員でも知らないことあるんだ?」
「うちでは……もとの勤め先ではスフィンクスは扱ってなかったから」
「ごめん」
「いいよ、なんでも知ってると思われるのはあるあるだから。医者でもないのに病気のこと詳しく聞かれることもあったよ。なんで知らないんだって怒られたり」
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