三日月が浮かぶ部屋で猫は ~新米ペットシッターは再会した初恋の彼の生涯専属を求められる~
「ごはん、食べていってよ」
暗い窓の外を見て尚仁が言った。キッチンに立ち、ガサゴソとなにかを出す。
「実はもう材料買ってあるんだ。カレー、好きだったよね?」
「そうね」
沙耶は苦笑した。子供のころ、甘口のカレーが大好きだった。
「辛さはどれくらいにする?」
「普通で」
「逆にむずかしいな」
彼は何種類かのカレールーを前に悩む。沙耶は横から覗いて、じゃあこれ、と中辛を選んだ。
「大丈夫? 辛くない?」
「もう子供じゃないんだから」
呆れて笑うと、そうだね、と尚仁も笑った。
「なんでこんなにルーを買ったの?」
「沙耶はどれがいいかな、と思ったらつい」
「相変わらず優しいね」
沙耶は苦笑した。
カレー作りを手伝おうとしたが、お客様は座ってて、と断られてしまった。
落ち着かない気持ちでテレビを見て待っていると、クレオパトラが足元に寄ってきて匂いをくんくんとかいだ。
そーっと手を伸ばしてみると、手の匂いもくんくんと嗅ぐ。
様子を見ていると、そのままぷいっと歩き去ってしまう。
「仲良くなるには時間かかるかなあ」
思わず呟く。
「なにか言った?」
「クレオパトラちゃんと仲良くなりたいな、って」
「いいこと思い付いた」
「なに?」
「うちにペットシッターに来て」
沙耶は驚愕して尚仁を見た。
彼は素知らぬ顔して皿に米を盛り、カレーをかけ、テーブルに並べる。
「できたよ」
呼ばれてダイニングのテーブルにつく。
サラダにカレーというシンプルなメニューだった。
「どうぞ」
「いただきます」
おいしそうなカレーだった。大きな具がごろごろしている。沙耶はいつも小さく切ってしまうから、大きな具のカレーは新鮮だった。湯気がのぼり、香辛料の匂いが空腹を刺激した。白いごはんととろみのある茶色のルーのコントラストが絶妙だ。