クズ男に囚われたら。
「……なんで昨日来なかったんだよ」
「え?」
「昨日。放課後」
わたしに顔を寄せて、わたしにだけ聞こえるように、瀬能は言った。
少し機嫌が悪い。
「……別に。元々約束してるわけじゃないし」
「は?」
「代わりの女の子くらいすぐ見繕えるでしょ、あんたなら」
「………」
それもそうだと、数秒の沈黙の後に瀬能は溢した。
それから、はぁ〜と大きなため息を一回。
「あとはその髪色だけだね」
「……明日からは元に戻すけど」
「はあ?」
「コレ、今日限定だから」
べ。と舌を出して小馬鹿にしたように笑う。さっきまでの不機嫌はどこへやら。
……なに考えてんのか全く読めない。
「今日は絶対来いよな」
わたしに返事をさせぬまま、それだけを言って瀬能は玄関の方へと行ってしまった。