クズ男に囚われたら。
「驚かさないでよ、いっくん」
「悪かったって。そんなに驚くとは思わなかったからさ」
かけている黒縁メガネをクイッあげて、その人は続ける。
「生活指導2日目なだけあって、ほとんどの子達は身だしなみクリアだね。あの瀬能くんまでちゃんとしてくるなんて」
「髪はまだだけどね」
「あはは。それでもすごいことだよ。さすが風紀委員」
わたしが持っているチェックリストを覗き込んで、うんうんと嬉しそうに頷く。
彼───いっくんこと、芹沢 伊月くんは、一個上のわたしの従兄弟。
そして、この学校の現生徒会長でもある。
黒髪、黒縁メガネ。もちろん身だしなみもオーケー。
見た目だけで超真面目人間なのがわかる。
そして悔しいことに、頭も良い。
運動もできるし、誰にでも優しいし、リーダーシップもあってみんなに好かれるという、非の打ち所がない人間だ。
そんな人と一部でも血が繋がっているだなんて信じられない。