極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
「それじゃあお母様、拓斗をよろしくお願いします」
「ええ、行ってらっしゃい」

 拓斗はお母様に抱っこされても泣いたり不安がる様子はない。

「じゃあね、夜にまた迎えにくるね」
「うん、ばいばい」

 保育園に行くときと同じように手を振る。
 あっさりしすぎていてこちらが寂しくなってしまうくらいだ。
 私と拓海さんは車に乗り込んだ。

「どちらへ行くんですか?」
「着いてからのお楽しみ」

 意味深な言い方をする拓海さん。
 空はもう夕暮れだ。
 雲ひとつない薄紫の空が広がっている。

「そういえば拓斗がね、今日はパパとママの絵を描くんだって言っていましたよ」
「そうか。それは楽しみだな」

 せっかくふたりでいても、やっぱり話題になるのは拓斗のことだ。

「拓斗が書くママの絵は、いつもお化けみたいなんですよ」
「黒髪ロングだからな。そうなるのも仕方ない」

 拓海さんがくっと苦笑いする。
 ふと、空を見上げた。
 薄紫の空に、白いものがゆっくりと動いている。
 運転しながらの拓海さんにもちらっと見えたらしい。

「飛行機だな。拓斗に見せてやりたかったな」
「そうですね。最近飛行機にも興味津々ですから」

 なんでも子どもに結びつけて考えてしまう。
 親になるとそういうものなんだろうか。
 けれど、そんな時間も嫌じゃない。
 むしろ、とても幸せな時間だ。
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