極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
 東京駅に着くと、ひとの多さに驚いた。
 通勤で使ったこともないし、普段乗る機会もないから、駅の中がこんなに広いということも知らなかった。
 これは気を緩めたら迷子になりそうだ。

「拓斗、手絶対離しちゃダメだからね」
「はあい!」
 
 返事だけはいつも一人前の拓斗。
 大丈夫かなあと一抹の不安がよぎる。

「たくみくんも、て、つなごう」

 拓斗が小さな手を拓海さんのほうへと伸ばす。
 一瞬驚いた顔をした拓海さんはすぐにやさしい表情になった。

「そうだな」

 拓斗を挟んで、三人で歩く。
 なんだか親子みたいだ。
 嬉しいような照れくさいような、泣きそうなような、不思議な気分。
 入場切符を買って駅のホーム階へ上ると、何体もの新幹線が停まっていた。

「うわあすごい!」

 拓斗が目を輝かせる。
 白い新幹線。緑の新幹線。赤い新幹線。
 レールの下のほうには普通列車も見える。
 赤と緑の連結した新幹線を見つけて、拓斗は「あっちにいくー!」と別のホームに行きたがる。
 さらにお気に入りの新幹線を見つけてそっちに移動する。
 それを何度か繰り返した。
 さすがに疲れて、時計に目をやる。
 もう十二時だ。

「ちょうど昼ですね」
「お腹空いてきたな」

 拓海さんは拓斗に目線を合わせる。

「拓斗くん、お外でご飯食べようか。東京駅が見えるよ」
「うん!たべる!」
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