イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 ……ない。スマホにつけていたはずの、一堂くんとお揃いのネコのキーホルダーが、いつの間にかなくなっていた。


 正確には、スマホにはキーホルダーの紐しかついておらず、そこにあるはずの白ネコの姿だけがない。


 スマホを入れていたズボンのポケットの中に、ネコが落ちてるってこともないし。


 もしかして、登山の途中でどこかに落とした? バスに乗ってるときは、確かにあったから。


 わたしは、頭が真っ白になる。


 どうしよう。あれは一堂くんがわたしのために、わざわざUFOキャッチャーで取ってくれたものなのに。


 一堂くんと初めて出かけた日の、大切な思い出のものだから……探しに行かなくちゃ。


「杏奈、真織、ごめん。わたし、途中で落とし物をしたみたいだから。戻るよ」

「依茉ちゃん、落とし物って。私とまおりんも一緒に探しに行こうか?」

「ありがとう。でも、大丈夫だから。みんなは先に山頂まで行ってて!」


 わたしは杏奈たちにそれだけ言うと、来た道をひとり戻ることにした。


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