腹黒御曹司の一途な求婚
 そういうわけで創業記念パーティーに参加することになったのだけれども、職場にバレてしまったのは完全に想定外だった。
 
 パーティーの会場がアスプロ東京だと知った時はちょっと気まずいなぁと思ったものの、そこまで気にはしていなかった。
 かなり大規模なパーティーのようだから、ホテル側にも全参加者のリストは共有されないだろうし、当日は人ごみに紛れるだろうとタカを括っていたのもあって。

 けれども三日ほど前に、営業部の女性社員から「これってもしかして美濃さんだったりします?」と控室の使用者リストを見せられたのだ。冗談抜きで胃がひっくり返るかと思った。
 
 同じ控室を使うのは、蒼士と彼のご両親だけ。完全に身内扱いされている。
 さり気なく訊ねている風を装っても、彼女の瞳は好奇心から爛々と輝いていて。

 残念なことに、同姓同名なんて偶然ですね、などと言って上手にしらばっくれるスキルなんて、私にはなかった。
 吐くまで居座るからと言わんばかりの圧のこもった彼女の笑顔に気圧され、私は観念して「実はお付き合いをしていて……」と白状してしまったのだ。
 
 するとものすごい勢いで話は広まって、今やフロア全体が知っているという羞恥案件。いや、自業自得なのだけれど。

 松田さんにはまた散々冷やかされ、小芝ちゃんからは「すごーい!玉の輿ですね!」なんて目をキラキラさせながら言われ続けて。
 小芝ちゃんをフロアの出口まで見送った後は、とてつもない疲労感に襲われたのだった。
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