腹黒御曹司の一途な求婚
そんなこんなでパーティーの当日。
「萌黄ちゃん、とーっても別嬪さんよ。やっぱり若い子はなんでも上手に着こなせるのねぇ」
姿見の前に立つ私に、帯を結び終えた祖母が鏡越しににっこりと微笑んだ。
鏡の中には淡い黄色地に満開の梅が描かれた振袖に身を包んだ自分の姿が映っている。
着物を着るのは美濃の家を出て以来だ。
成人式も大学の卒業式も、出席していない。あの頃はまだ、着物を見ると家のことを生々しく思い出してしまって辛かったから。
それを思うと、私も少しは成長して前を向けているのかな、という気がしてくる。
この振袖は結婚前、父が母に贈ったもののうちの一つらしい。高価な手描きの京友禅を手土産代わりに持ってきた娘の交際相手に、当時は大層驚いたのだと祖母は回顧していた。
複雑な気持ちがないわけじゃない。
でも母の着物を身に纏ったら、母に見守ってもらえるような気がして。
ともすると怖気付きそうになるこの身を奮い立たせるために、祖母に頼んで箪笥から引っ張り出してもらったのだ。
そこへ古めかしいチャイムが鳴り響き、祖母は緩慢な動作で和室を出て行った。しばらくすると迎えにやってきた蒼士を連れて、祖母が戻ってくる。
彼ももちろん盛装していて、いつもは分けているだけの艶のある黒髪を今日は後ろに撫でつけている。
一目で仕立ての良さが分かるフォーマルなブラックスーツは彼の怜悧さを引き立てていて、あまりに完璧な造形に私は思わず見惚れてしまう。
「萌黄ちゃん、とーっても別嬪さんよ。やっぱり若い子はなんでも上手に着こなせるのねぇ」
姿見の前に立つ私に、帯を結び終えた祖母が鏡越しににっこりと微笑んだ。
鏡の中には淡い黄色地に満開の梅が描かれた振袖に身を包んだ自分の姿が映っている。
着物を着るのは美濃の家を出て以来だ。
成人式も大学の卒業式も、出席していない。あの頃はまだ、着物を見ると家のことを生々しく思い出してしまって辛かったから。
それを思うと、私も少しは成長して前を向けているのかな、という気がしてくる。
この振袖は結婚前、父が母に贈ったもののうちの一つらしい。高価な手描きの京友禅を手土産代わりに持ってきた娘の交際相手に、当時は大層驚いたのだと祖母は回顧していた。
複雑な気持ちがないわけじゃない。
でも母の着物を身に纏ったら、母に見守ってもらえるような気がして。
ともすると怖気付きそうになるこの身を奮い立たせるために、祖母に頼んで箪笥から引っ張り出してもらったのだ。
そこへ古めかしいチャイムが鳴り響き、祖母は緩慢な動作で和室を出て行った。しばらくすると迎えにやってきた蒼士を連れて、祖母が戻ってくる。
彼ももちろん盛装していて、いつもは分けているだけの艶のある黒髪を今日は後ろに撫でつけている。
一目で仕立ての良さが分かるフォーマルなブラックスーツは彼の怜悧さを引き立てていて、あまりに完璧な造形に私は思わず見惚れてしまう。