仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
壱護の顔が何となく見られないまま、二人は案内された席に座る。
レストランはかなり広々としており、もちろん窓からは景色が望める。夕日に照らされ、赤橙の海が美しく輝いていた。
「わあ、すごく綺麗……!」
スマホで写真を撮る手が止まらない。
でもレンズ越しだと、この美しさが上手く表現できていないように感じた。
「撮ってやるよ」
「えっ!?」
「SNSで上げる用が必要なんだろ」
そう言って壱護は自分のスマホを構える。
どんな表情をしていいか迷い、とりあえず両手に手を置いて壱護の方を見つめる。
カメラを向けられたらすぐに表情を作るのがモデルなのに、ぎこちない笑顔しか作れない。
「プッ、表情堅」
「なっ」
カシャリ、とシャッター音が聞こえた。
「ははっ!変な顔!」
「ちょっと!!もっと綺麗に撮ってよ!」
「モデルにあるまじき顔だな」
「撮り直して!!」
そう言って杏葉は頬に右手を添えてポーズを取る。
一気に緊張がほぐれていつもの調子が戻ってきた。
「撮る気起こらねえな」
「なんでよ!」
なんて二人で騒いでいたら、前菜が運ばれてきた。
すぐによそゆきの笑顔を作る杏葉に対し、「よくやるよ」と小声で溢す壱護。
杏葉は笑顔を貼り付けたまま、テーブルの下で夫に蹴りを入れた。
「足癖の悪いモデル様だな」
「あらやだ、何のことかしら?」