仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 その後も表向きは仲睦まじくコースディナーを楽しみながら、水面下では素顔のままで突き合う。
 仮面の下で行われる戯れは、とても刺激的だった。


「(最初から素のままで接していたからなのか、壱護とは気兼ねなく話せるな……)」


 赤ワインを口にしながら、チラリとかりそめの夫を見やる。
 ナイフとフォークを持つ手は慣れているようで、所作に無駄がない。料理を口に運ぶ仕草さえも美しく、育ちの良さを感じさせる。

 本物のセレブとは、彼のことを言うのだろう。
 柑奈からテーブルマナーの本を読ませられ、何度も叱られた自分とは大違いだと思った。


「何じっと見てんだよ」

「べ、別にっ?」

「食べ方がわからないのかと思った」

「わかるわ!」


 本音はちょっと食べ方に迷っていたなんて言えなかった。
 コース料理は美味しいけれど食べ方に迷う珍しい料理も多い。

 杏葉は料理がなるべく崩れないように気をつけながら口に運び、初めての味に舌鼓を打つ。


「美味しい!!」


 ローストされた牛肉で野菜を包んでいるようだが、何の野菜を使っているのかはわからなかった。
 緑色のソースはピスタチオだろうか。ナッツ系の味が舌の中で広がる。

 正直どんな料理なのかはよくわからない。
 説明された気がするが、英語が聞き取れなかった。だが美味しい。


「こんなに美味しいの、初めて食べる〜!」


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