仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
頬っぺたが落ちるとはこのことを言うのだろうと思った。
そんな風に感激している杏葉を見て、壱護は可笑しそうに笑う。
「素が出過ぎ」
「あっ……」
「アズハは食べ慣れてるんじゃなかったのか?」
壱護は意地悪く笑ったが、杏葉はこの際開き直った。
「うるさい!アズハだって美味しいものは美味しいって感動するのよっ」
ちょっとむくれながら二口目を運ぶと、カシャッという音がした。目の前では壱護がスマホを構えている。
「えっ、今撮った!?」
「良い顔してたから」
「嘘!絶対変な顔してたでしょ!消して!」
「無理」
「ちょっと!!」
「これはあんたにも見せない。俺専用な」
「はあーー!?」
一人で変な顔をした杏葉の写真をニヤニヤ見るということだろうか。杏葉は人目を気にせず、真っ赤な顔で壱護を睨む。
「消してよ!!」
「はははっ」
「っ!」
揶揄われてムカつくのに、子どもみたいな無邪気な笑顔に思わずドキッとしてしまった。
壱護のこの笑顔を旅の中で何度か見ている。
口が悪くて偉そうだったり、無愛想なところもあるが時折見せる少年のようなあどけなさ。
「(こういう一面って、みんな知ってるのかな……?)」
天才外科医の意外な一面を知れたのは、何だかちょっとだけ優越感に浸れるような気がした。
それと同時に、知っているのが自分だけであって欲しいとも思う。
何故そんな風に思うのか、杏葉は自分でもわからなかった。