仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
デザートを食べ終わる頃には完全に日は落ちていた。
群青色に染まった空と海、船上から見える夜景がとにかく美しい。
お腹が膨れて、少し散歩するにはちょうど良かった。
デッキでは音楽隊が演奏しており、ロマンチックかつムーディーな演出に一役買っている。
杏葉と壱護も夜風に当たり、酔い覚ましをしていた。
七日間のハワイでの旅はあっという間だった。
「最初はどうなることかと思ったけど、楽しかったなぁ」
「それは良かった」
「改めて連れて来てくれてありがとう」
杏葉は満面の笑みで心からのお礼を言った。
子作り新婚旅行なんて言われて最初は戸惑ったけど、案外楽しかった。同室で寝るのもすぐに慣れてしまった。
どのホテルもマットレスがあまりにも気持ち良かったからかもしれない。
「――、」
「……え」
急に壱護の手が杏葉の頬に触れる。
そのままグッと壱護の顔が杏葉に近づいた。
「(えっ、えっ!?)」
杏葉の心拍数がどんどん上がる。
わけがわからないが、身体中が凍り付いたように固まってその場から動けなかった。
杏葉は思わずぎゅっと目を瞑る。
杏葉の唇にあと数センチ、あと数ミリで壱護の唇が重なり合うところで――
「うわああああああああ!!」
響き渡る子どもの泣き声にビクッとした。
振り返ると、金髪の少年が転んで泣いている。