仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 壱護はスマホの画面を見せながら、低い声で言った。


「この動画、バラされたくなかったら二度と杏葉に近づくな」


 そこには杏葉の腕を掴み、無理矢理車に連れ込もうとする梨本の姿がはっきりと映っていた。


「クソッ」


 その時、初めて梨本が表情を歪めた。梨本の真の素顔を見たような気がした。

 梨本は車に乗り込むと、そのまま車を走らせて行ってしまった。


「大丈夫か杏葉!?」


 すぐに壱護は杏葉の肩を掴んで心配そうに顔を覗き込む。
 同じように触られても、壱護に触られるのはちっとも嫌じゃない。

 むしろ安心してボロボロと涙が溢れ出た。


「こ、こわかった……っ」

「もう大丈夫だから……」


 そのままぎゅうっと抱きしめられて、もっと涙が止まらなくなる。
 壱護は杏葉が落ち着くまでずっと抱きしめ続けてくれた。

――どうして来てくれたの?
――なんでわかったの?

 聞きたい気持ちもあったけれど、今は全身を壱護に預けたい。
 壱護の温もりで満たされたい。


「(やっぱり私、この人が好きだな……)」


 壱護の腕の中、いつの間にか恐怖心は消えて愛おしさで溢れていた。


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